舞台がはねたら 第11話
花形スターが戸惑いつつも頷くのを確かめるや否や、団長は踵を返すと真っ直ぐに医務室へ向かう。一座の医者にメロディの腕と指を診せ、多少の張りがある以外に問題はないという結論を得た後もまだダリウスは彼女を解放しようとはしない…
花形スターが戸惑いつつも頷くのを確かめるや否や、団長は踵を返すと真っ直ぐに医務室へ向かう。一座の医者にメロディの腕と指を診せ、多少の張りがある以外に問題はないという結論を得た後もまだダリウスは彼女を解放しようとはしない…
どんな時も冷静沈着な対応を誇るダリウスがここまで取り乱しながらも彼女を降板させなかったのは、怪我の具合が軽度で済んだということの他、オードリーたちに告げられるまで彼の目をも欺けるほどメロディが見事に出番を務めていたから…
その後もエフェメール一座の公演は順調に続き、1ヶ月の興行は早くも折り返しを迎えていた。数日毎に休演日を設けているとは言え、ここまでの長丁場ともなると演者たちへの負担は大きく、特に動物曲芸の主役である虎や熊、馬や猿たちに…
例え目を凝らして見ていたところで、いつそれが行われたかもわからないほど鮮やかに鍵を預けた後、ダリウスはさり気なくその場を離れ日課の見回りに向かう。華やかに舞台を盛り上げてくれた動物たちは既にぐっすりと眠りに就いていて、…
「ところでメロディ、いよいよ明日から休暇の申請受け付けが始まるんだが」 「もうそんな時期ですか?」 「おや、私はきちんと1週間前から食堂の掲示板に告知を貼ったぞ。さては読んでいないんだな」 手近な椅子に腰かけたダリウス…