舞台がはねたら 第16話(R-18)
悩みには事欠かない立場と状況の中、いかに表向きは落ち着いて見えていようと癒しも欲しければ安らぎも欲しい。そのどちらも与えてくれる存在が目の前にいるというのに、早々逢瀬を切り上げるなどという選択肢は端から論外だ。 「でも…
悩みには事欠かない立場と状況の中、いかに表向きは落ち着いて見えていようと癒しも欲しければ安らぎも欲しい。そのどちらも与えてくれる存在が目の前にいるというのに、早々逢瀬を切り上げるなどという選択肢は端から論外だ。 「でも…
短い休みを経て一座は公演を再開し、それからの日々は飛ぶように早く過ぎていった。毎晩絶え間なく響き渡る大歓声は、開幕直後から惜しみない拍手と共に演者たちへと送られていたが、中でもアレックスとメロディに対するそれは格別だ。…
「……君の言い分はよくわかったが、それでも今夜の舞台に関する変更は承認できない」 部屋を包む沈黙を破るように響いたダリウスの声は如実に疲れを滲ませていて、メロディは恋人の心中を慮らずにはいられない。アレックスとの間に決…
「僕を……クビにすると仰るんですか? この僕を、アレッサンドロ・ジラルディーノを!?」 そこまでの処分を下されるはずがないと考えていたのだろう、アレックスは呆然とした様子で問い返す。だがダリウスはあくまでも冷徹に去り行…
舞い上がる炎、軽快な音楽。出だしから絶好調の公演は後半に入ってなお気迫あふれる演技に彩られ、熱気に満ちた観客席はこれ以上ないほどに盛り上がる。最終日とは得てして常にそういうものだが、今夜ばかりは特別だ。 「団長、見てく…