歓喜の歌を奏でて 第6話
『……信じてもらえたかい、トゥーラ』 頭の中に直接語りかけた声にトゥーラは慄くが、それは間違いなく彼女と愛を交わした相手のものだった。ずっとマノエルと呼んでいた、長く知っていたはずの男の。 『いかに私が人の形を借りられ…
『……信じてもらえたかい、トゥーラ』 頭の中に直接語りかけた声にトゥーラは慄くが、それは間違いなく彼女と愛を交わした相手のものだった。ずっとマノエルと呼んでいた、長く知っていたはずの男の。 『いかに私が人の形を借りられ…
巣を後にしたマノエルが再びトゥーラの家に戻った時、辺りは既に暗く、窓からは小さな灯りが漏れていた。現実を悲観するあまり、自ら命を絶つようなことをされなかったのは幸いだ。彼は小さな虫に姿を変え静かにその窓辺に留まる。 “…
3日間は双方にとって果てしなく長く感じられた。既にトゥーラの身体には妊娠の兆候が現れており、心労からくるものとは思えない不可思議な怠さや疲れ、つわりのような吐き気が事実を端的に彼女に突きつける。外に出て仕事をしようとし…
「今……君は、何と……?」 マノエルはそれだけ口にするのがやっとという顔をしていた。聞こえたことが信じられないという表情も露わな彼に、トゥーラは長らく胸の中に秘めたままでいた想いを告げる。 「子供がどんな姿でも、私たち…
「マ……マノエル様!」 その翌日、太陽が天の頂きに差しかかろうという時間。住処に再び姿を現した王にルカスは安堵した。間もなく戻ってくるはずだと周囲を諭したのは彼だったが、その言葉に必ずしも揺らがぬ自信があったわけではな…