荒野の恋人たち 第11話
それは法外な値段だった。あまりの数字に若いカウボーイは思わず言葉を失い、そんな彼を馬の上から黒い眸が憐れんで見下ろす。 「どうだ? 無理な話だろう。多少なりとも金があるなら大人しくお姫さんを預けな。死んだらそこで終わり…
それは法外な値段だった。あまりの数字に若いカウボーイは思わず言葉を失い、そんな彼を馬の上から黒い眸が憐れんで見下ろす。 「どうだ? 無理な話だろう。多少なりとも金があるなら大人しくお姫さんを預けな。死んだらそこで終わり…
緑も疎らな荒野で草を食んでいる1000頭ほどの牛。その中に見える人影はたった5人、しかも1人は幌馬車の御者台に腰を据えている。それでも牛たちは皆同じ方角に向けて蹄を鳴らし、時折違う方向へ曲がりそうなものが散見されても、…
しばらく前までお互いの存在すら知らなかった2人は、どちらも言葉を発することなく爆ぜる炎を見つめていた。だが夜の闇よりもなお濃い色のコーヒーを好む男は、斜向かいに腰かける娘に向かって静かに口を開く。どこか胸が高鳴るような…
草地が途切れると大地は乾いた赤い土を剥き出しにし、晴れてはいても強い風は砂埃となって行く手を阻む。牛や馬はこの手の不愉快な陽気を殊更酷く嫌い、牛の中にはちらほらと速度を上げがちなものも現れた。日頃は大人しく扱いやすさで…
一行は豪雨に遭った後も更に4日間旅を続け、故郷を離れてから地図に記された初めての町に着いた。しかしそこは想像していたよりも小さく寂れた田舎で、働き盛りの若者の姿などほとんど見受けられない。ゴードンとテッドを牛の番として…