荒野の恋人たち 第36話
シャンティの声はかくも熱っぽい響きを持っていただろうか? だがその答えを見つけられないうちに吐息が首筋を撫で、次の瞬間頬に触れたのは何とも柔らかいものだった。軽い足音が遠ざかり、馬車の幌が下ろされた音を聞いて初めて彼は…
シャンティの声はかくも熱っぽい響きを持っていただろうか? だがその答えを見つけられないうちに吐息が首筋を撫で、次の瞬間頬に触れたのは何とも柔らかいものだった。軽い足音が遠ざかり、馬車の幌が下ろされた音を聞いて初めて彼は…
ゴードンと共に宿を押さえてレオンが広場へ戻った時、その目にまず飛び込んできたものは泣くシャンティの姿だった。しかし想い人の涙に彼が駆け寄ろうとするより早く、アコーディオン弾きの若い男が彼女へハンカチを差し出す。 「おい…
「き、今日は来てくださって本当にありがとうございます。ゆ……夢みたいです。も、もう1度あなたに、お、お逢いできるなんて」 大衆的な料理屋でレオンの前に座るプルーデンスは、生来の吃音に苦しみながらも感謝の言葉を告げる。憧…
シャンティは灯りも点けずにドアのすぐ傍で立ち尽くしたまま、レオンの部屋の扉が乱暴に閉められる音を聞いていた。夏だというのに酷く寒い。身体ではなく心の芯が凍えそうなほどに震えている。 眠っている彼の頬へと密かに口づけて…
「……どういうことだ?」 「だから俺が言った通りさ。潰れかけの鉱山村が苦し紛れについたでまかせだろ。ここからフォートヴィルまでは1ヶ月もかからねえってとこだが、実際に行って帰ってきた奴から直接そう聞いたんだ」 馬に鋤を…