楽園の扉【完】

楽園の扉 第6話

「……ベラ」 「何よ、起きてたの?」 「ここにルーチェという女が訪ねて来たら雇ってやってくれないか」  心許ない灯りが幻のように辺りを照らす部屋の中、微かな衣擦れの音を立てたイザベラがベッドの傍までやってくる。そして咥え…

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楽園の扉 第7話

「――あんた、ルーチェだね?」 「はい」 「ノアから話は聞いてる。お入りよ」  その日の廓が客に門を開くよりも少し前のこと、イザベラは自身の古着を纏った娘が歩いてくる姿を眺めていた。柄にもない頼み事をされた時には本当にそ…

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楽園の扉 第8話

 一概に娼婦と呼ばれる者にも大小様々な区別があり、路上で男の袖を引いては一儀に及ぶような者もいれば、下手な宝石より一晩の逢瀬が高くつく類の者もいる。イザベラの娼館で働く女たちは後者に属するものであり、上流階級の者と連れ立…

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楽園の扉 第9話

 ルーチェが元来努力家であることは娼館でも大いに役立った。教えたことをすぐに吸収していくその成長ぶりは目覚ましく、イザベラは期待を上回る愛弟子にさらに知識を与えていく。このままいけば店に出せる日も近いと彼女の口から言われ…

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楽園の扉 第10話

 殺し屋という稼業は日毎あくせく働く類のものではない。相手は殺し、自分は生きる。そのためにはこちらも何かと金の要る仕事であるということに間違いはないが、それでも月に数度も人を殺せば後は好きなように生きていける。  その前…

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