レオンはもう1度安心させるように熱いキスを贈ると、再び彼女の一糸纏わぬ身体を両手で辿りだした。胸の膨らみの始まりへ、その豊かな影の下へと頭を下げ唇で触れていく。彼の通った鼻筋がなめらかな腹部を優しく擽り、小さく喘いだシャンティは膝を立てさせられても抗えない。そっと押し開かれる脚の間に相手の姿が映ると、彼女は来たるべきものを察して我知らずぎゅっと目を瞑り――。

「――っ!!」

 熱く湿った吐息を神聖なその場所に感じた瞬間、穢れを知らない秘所は愛する男の唇で覆われた。柔らかな舌が閉じた秘裂を下から上へ何度もなぞり、時にはじっくりと味わうように更に奥へと挿し入れられ、身体の中でとろけていた蜜はついに泉へとあふれ出す。長らく甘い奉仕を続けた後のレオンの唇からは、シャンティが感じた証として濡れた銀の糸が引いていた。
 口元を拭った男は次に掌を上に向けたまま、1番長い指を徐々に彼女の秘所へ沈み込ませていく。ゆっくりとそれを抜かれてはまた改めて挿入される度、ぬめる指先で敏感な蕾を同時に撫でさすられれば、シャンティは大きすぎる快楽に身を捩らずにはいられない。レオンは愛おしそうに目を細めてそんな彼女を見下ろすと、声を出さぬよう唇に重ねられた恋人の手を外す。そして戸惑い気味に彼を見上げたシャンティの髪を撫でると、黒髪の男は濃厚な口づけで甘い声をふさいだ。その合間にもレオンの指は相手の身体を開いていくが、彼は決して性急に次の段階へ進もうとはしない。もうすぐ自身を受け入れる場所を丁寧に解す行為には、共に歓びを感じたいレオンの愛情が込められている。

“ああ……レオン……”

 1本だった指が2本に、そして3本へ増やされる頃にはもはや疼きも限界だ。新たな刺激も彼の手によってすっかり快感へと変わり、昂る身体はそれに飽き足らずもっと満たされたいと逸る。身も心もその全てを捧げ愛してほしいと願う相手。星の数ほどいる異性の中からこの世界にたった1人、運命に導かれめぐり逢った命にさえ等しい男。かくも恋い慕う相手に触れてほしいと思わないはずがない。身の内から湧き上がる想いは純粋な欲望と同時に、何よりも強く自身を相手に結びつけている愛情だ。破瓜の痛みなどもう頭の片隅にさえも浮かばないほど、シャンティはレオンを求めている――彼と1つになりたいと。

「レオン、お願い……!」

 再び胸に唇を這わせる男の名前を呼びながら、未だ無垢な娘は耐えきれず懇願の言葉を口にする。上げられたレオンの視線は同じ思いを伝えていたものの、そんな一瞬の間でさえ気も狂わんばかりにもどかしい。つぷりと引き抜かれた彼の指を惜しむように秘所がざわめき、シャンティは自らの身体が示した反応に驚いたが、こんなに燃えてしまうのもひとえにレオンを愛しているからだ。
 彼がシャツの釦を外す毎に開かれていく布の合間、そこから垣間見える恋人の肌はほのかに汗ばんでいる。その広い胸板が露わになると一際鼓動が高鳴り、ベルトが外されれば男の身を隠すものはもう何もない。

“……何て綺麗なの……”

 小さな光に照らし出される身体は陰影に彩られ、まるで命を持った芸術品を前にしているかのようだ。彼女は均整のとれた線に感嘆のため息をついたが、その下腹部で雄々しくそそり勃っているものが何か気づくと、さすがにすぐさま目を逸らし火が点いたように顔を赤くした。じっくりとそれを見つめることなど到底できはしないものの、初めて目にするそれは大いなる情熱と欲望に滾り、彼もシャンティの全てを求めているとはっきり示している。
 レオンは横たわる彼女を腕に抱くと肌と肌とを合わせ、鼓動の早さを確かめるように細い首筋に口づけた。しようと思えばすぐにでも欲を満たすことはできるだろうに、こうして大切に扱ってくれる彼の全てが愛おしい。そしてレオンは恋人の耳元に掠れた声で投げかける――ここから先の世界へ足を踏み入れるための最後の問いを。

「……本当にいいんだな?」

 それにシャンティが頷くと言葉はもはやその役目を終えた。

「んん……っ!」

 裂けるような鋭い痛みと共に彼が中へ入ってくる。指とも舌とも比べ物にならない質量を持ったそれは、息苦しくなるほどの圧迫感を伴ってはいるものの、それ以上に彼女をあふれんばかりに満たしてくれているのは、ついにレオンと結ばれたという圧倒的な充足感だ。浅く短い呼吸を何度も繰り返し痛みを紛らわせ、少しずつ身体の中へと進んでくる彼を受け入れていく。その根元まで迎え入れるまでには長くかかった気がしたが、それさえもシャンティにはレオンとの親密な時間に過ぎない。
 今までとは別の何かに生まれ変わってしまったかのように、純潔を失った彼女は深い感慨を覚えるものの、それは決して不快なものには成り得ずむしろその逆だった。涙の滲む眸は1つに結ばれた相手を映し出し、尽きない愛は鈍く残る痛みまで喜びに変えてくれる。

「……っシャンティ……」
「レオ、ン」

 お互いの名を呼ぶ唇が触れ合う毎に広がる幸福、繋がった場所から呼び覚まされる燃え上がるような焦燥感。レオンにこうして求められ、腕に抱いて愛してほしかった。自分とは違う世界に生きる男なのだとわかっていても、恋に落ちた時からずっとこの瞬間を夢に見ていたのだ。彼への純粋な愛故に涙は止め処なく頬を伝う。

「あ……ぁ、レオン……!」

 レオンを信じ、愛する想いにシャンティは全てを委ねた。彼が緩やかに刻み始める律動に自分の身を添わせ、熱い吐息を重ね合わせては絶え間ない口づけに応える。鈍く残る痛みの中にも少しずつ生まれ始める快感、そして同時に高まっていく身体を焼かれんばかりの疼き。相手の肌から滴る汗さえ今の彼女には愛おしく、とうとう知ることを許された歓びはどこまでも果てしない。求められるままに己が身を開き、深くまで受け入れる。誰かを愛するということ、その想いが行き着く果てをレオンと2人で確かめるために。

「!」

 男はシャンティを穿ったまま器用に身体を入れ替えると、自分の上に乗せた恋人を抱きしめつつ半身を起こす。向かい合わせに座る姿勢になった2人は視線を交わすと、お互いの背に腕を回しキスをしながら深く愛し合った。彼の指が髪をかき上げ、あるいは背中を滑る度に快感が全身を駆け巡る。繋がった場所だけではなく、レオンの触れる場所は皆快楽に染まってしまうかのようだ。
 こんなにも幸せな夜を恋人と共に過ごしてしまえば、独りで過ごさねばならぬそれはさぞや辛いものになるだろう。だがこの幸福を知らずにいた方がよかったとは思わない。全身全霊で彼を愛した思い出はきっとこれからも、ずっとシャンティの心の中で輝き続けてくれるはずだ。今夜彼女がレオンと誰よりも深く結ばれているように、彼も今だけはシャンティ独りのものになってくれたのだから……。

「くそ……っ、もう」

 時間を忘れてしまいそうな交わりの終わりが近づく中、呻くように告げられた言葉が意味するものは1つしかない。そこで身を引くという選択もあるいはできたかもしれないが、2人は強く抱き合ったまま“その時”に臨むことを選んだ。最後の一息で遥かな高みを目指し突き上げたレオンを、しっとりと濡れた彼女の身体が絡みつくように締め付ける。

「……っ!」

 幾度も跳ねる脈動、魂を満たす限りない幸福。その瞬間、2人は確かに同じ煌めきの中にいた。乱れた呼吸のまま顔を上げた彼らは再び口づける。お互いの身に腕を回し、重ねられた唇がもう1度それぞれの名を呼び合うまで。