荒野の恋人たち【完】

荒野の恋人たち 第1話

 埃っぽい風が気持ちばかりの下生えの草を揺らす中、栗色の髪をした女は台地に伏せて眼下を伺う。その窪地は丈の高い夏草のおかげで人目にもつかず、ならず者たちが身を隠すには最高の理想的な場所だ。岩陰に無造作に放られたいくつもの…

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荒野の恋人たち 第2話

「お前さんが……本当に?」  一瞬目を丸くして呆気にとられた表情を見せた後、レオンは俄かには信じ難いと言わんばかりにそう尋ねる。だがその声色に相手を見下す響きなどは感じられず、例えシャンティが男でも彼は同じくそう言ってい…

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荒野の恋人たち 第3話

 レオンとクライヴが2人それぞれ馬の手入れをしている頃、母屋に戻ったシャンティは夕飯の支度の続きにかかる。しかしジャガイモの皮を剥く手つきに淀み1つないとはいえ、頭の中を占めているのは思いがけぬ来訪者のことだ。 “最後の…

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荒野の恋人たち 第4話

 その晩の食事は心配とは裏腹に和やかに進んだ。それはシャンティの最も得意とする料理の1つでもあり、牧童たちから絶大な支持を集めて止まぬミートパイが、食卓を飾っていたことも決して無縁ではなかっただろう。そしてまだ熱いそれを…

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荒野の恋人たち 第5話

 牧場の朝は早く、誰もが薄暗いうちに目を覚ましては自分の仕事に取りかかった。寝ずの番を終えたクライヴは絞った乳を母屋へと運び、ゴードンとテッドは牧草地へ牛や馬を連れてゆき放す。無駄のない慣れた動きで手早く厩舎の中を掃除し…

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