誰より君を 第11話
最初に目が合ったのはジェレミーだった。彼と一緒に踊っていたエミリアも、一瞬浮かべた驚愕の後にはすぐ祝福するような笑顔を見せてくれる。次に視界に映ったのはブライトン夫人で、ウィリアムの存在に気づいた直後にその隣にいる姪を…
最初に目が合ったのはジェレミーだった。彼と一緒に踊っていたエミリアも、一瞬浮かべた驚愕の後にはすぐ祝福するような笑顔を見せてくれる。次に視界に映ったのはブライトン夫人で、ウィリアムの存在に気づいた直後にその隣にいる姪を…
――その夜、帰りの馬車は静かだった。アンヌは向かいで黙ったまま俯いている叔母を見ながら今しがたの出来事を思い返す。 「リッジウェイ伯爵夫人、ご挨拶もせずに失礼しました。姪御さんをお返しします」 ひとしきり続いたダンス…
最初から前途多難なことはわかっていたのだから言い訳などはしたくない。しかし馬車がリッジウェイ伯爵邸の前でその車輪を停めた時、ウィリアムは今までに経験したことがないほどの緊張に襲われていた。門は閉ざされてこそいないとはい…
想い人が心を寄せてくれるに至った経緯を知ることはどんな時にも嬉しいものだ。だがそれが自分にとって誤ちにも思えることがきっかけだったという場合、一体どんな顔をしてその場にいるのが最も正しいのだろうか。 眠れぬ夜を過ごし…
「旦那さま、旦那さま!」 ――それから1ヶ月余りが経ったその日、ルウェリン伯爵のカントリーハウスには若い執事の声が響いていた。 「今度は一体何だ、バレン」 ウィリアムがうんざりしているのは去年代替わりしたこの執事がや…