誰より君を 第16話
結婚するということがただ単に人前で永遠の愛を誓い、指輪を交換する儀式を指すだけではないことなどアンヌとて当然理解している。そして身分の違いなく10年の時を過ごした学び舎での長い月日において、恋仲の者たちがお互いの想いを…
結婚するということがただ単に人前で永遠の愛を誓い、指輪を交換する儀式を指すだけではないことなどアンヌとて当然理解している。そして身分の違いなく10年の時を過ごした学び舎での長い月日において、恋仲の者たちがお互いの想いを…
例え恋人の侍女がこちらの様子を必死で窺っていなかったとしても、あんな風に身構えられてしまえばとても手など出せはしない。思いがけない再会を喜ぶあまりに思わず深いキスをしてしまった時も、ウィリアムにとってアンヌが驚いていた…
アンヌがアマースト家へやって来てから早くも10日近くの時が流れ、残りの滞在も僅かとなればその全ては何よりも貴重なものだ。またしばらく離れ離れで過ごさなければならない時が近づいていることもあるのだろうか、より深い関係への…
だがアンヌがウィリアムの元に現れるという夢が叶うかもしれない暇などなかった。聖火祭の日は食卓に乗り切らないほどの食事でそれどころではなかったし、翌日は1年の最後を締め括るためには欠かすことのできない聖歌祭がある。夜を徹…
ルウェリン伯爵領だけに今も残る古い祭りの最後の1つ、聖果祭の成り立ちを知れば他所で廃るのも頷ける。それは新年というめでたい時をさらに喜ばしいものとするため、かつては高価で滅多に手に入らない桃を食べるという趣旨の祭りだっ…